【解説】 本作は明治44年5月の「日の出公論」に発表された作品である。主人公のお俊は、父親の商売が失敗、さらに母親を亡くし頼みの兄もあてに出来ず、弟や妹を抱えて孤軍奮闘している。秋聲の、自らの人生を犠牲にして働く女性への同情がうかがえる作品である。思えば、若き秋聲が敬慕していた存在は、女戸主として奮闘し、若くして病に倒れた女性作家・樋口一葉であった。